TOP
 正札シール組合>2019新春講演会
 
 田中祐 全日本シール印刷協同組合連合会会長講演 全文B
   
前に    
 SWOT分析とは   
 SWOTというのは、英語の4つの単語の頭文字です。Strength、Weakness、Opportunity、ThreatのS、W、O、Tを取ったものなんですけれども、自社の強みだとか自社の弱み、これを左半分に書いてあるところですね。内部環境と言います。自社の強みや自社の弱み。一方で自社を取り巻く外部環境。外部環境でのOpportunity、これはビジネスの機会ですね。ビジネスチャンス。今後こういうようなことが起こりそうだと。例えば、東京オリンピックがやってくるだとか、元号が変わるだとか、そういったものもあるかもしれないですね。あとはThreat、逆に脅威ですね。少子高齢化が進んでいくと売れなくなっていくよねだとか、そういったことをこういうふうにまとめてみるといいですよと。
 
 こういうふうにまとめるためには、さっきお話しした、自社が何で選ばれているのかだとか、お客さまはどういうふうに使い分けをしていらっしゃるのかというのが、裏返せば、皆さんの会社の強みなわけなんです。なので、自社の強みって、例えば自社の強みは何ですかって聞かれて、ぱっと答えられる人ってなかなかいないと思うんですよね。世の中の社長さんで。それは当たり前で、自分のことは自分が一番よく知っていると思いがちですけれども、それは自分しか見えていないんですよ。ジョハリの窓なんていうのもよくありますけれども、相手から自分がどう見られているのかというのは、自分自身は実はよく分かっていない。それは相手に聞いてみるしかないんですね。
 なので、まだこれからでも、お正月、新年のごあいさつにお客さまのところに行く機会があったら、もし分からなければ、「ところで、新年早々何なんですけれども、御社は何でうちと長年取引してくださっているんですかね」って、単刀直入に聞いてみると面白いですね。そうしたら、自社の強みが見えてくると思います。
 また、自社の弱みというのは、失注の理由であったりだとか、あるいは退職者が出てしまったときに、退職者の退職の理由なんていうのは、自社の内部体制の実は弱点であったりだとかするケースがありますので、そういったところはWのところに入りますね。あとは、OpportunityやThreatというのは、お客さまのその先のお客さまというのを考えると、割と見えてくるんじゃないかなと思います。ここまでは普通よくマーケティングの教科書とかにも出てくる話なんですけれども、矢印が引っ張ってあるのが、次にお話をするクロス分析というところです。
クロス分析とは
 これは、先ほどの図を、お手元に資料ありますので、先ほどの図と見比べながらやってもらいたいんですけれども、左上の強み、自社の強みと、右上のビジネスチャンス、これを掛け合わせると、自社の強みによって機会を最大限に活用するために取り組むことは何か。
 あるいは、左上の強みと右下の脅威をクロスで掛け合わせてみて、強みによって脅威による悪影響を回避するために取り組むべきことは何か。逆に、左下の弱みと右上の機会を掛け合わせて、弱みによって機会を逃さないために取り組むべきことは何か。あるいは下の2つですね。左下の弱みと右下の脅威、これを掛け合わせてみて、弱みと脅威により最悪の結果になることを回避するために取り組むべきことは何か。
 なので、まずSWOT分析で自社の強み・弱みと外部環境の機会と脅威を整理したら、それを斜めと横で掛け合わせをしてみて、そういう状況だから、それを打開するためには何をすればいいのかだとか、それをさらにエイハンするためにはどうすればいいのかだとか、そういったことを考えていくと、事業戦略というのがだんだん見えてくると思います。
 あと5分ありますね。最後の話まで行っちゃいましょう。ごめんなさい。後半駆け足になってきましたけれども、最後にもう1つだけ事例をお話ししたいと思います。
 PPMとは
 
 これはプロダクト・ポートフォリオ・マネジメントという概念なんですけれども、これは1970年代からもう既にある、ボストンコンサルティンググループというところが提唱した考え方なんですけれども。
 ある1つの大きな企業さんが複数の事業を展開しているときに、例えばA事業部、B事業部、C事業部、D事業部って複数あったときに、会社のお金だとか人だとかという、会社の資源をどこにどれだけ投入するかということを考えるためのフレームワークですね。それを考えるために、縦軸に市場の成長率。これからその市場が伸びていくのか、それとももう成熟したマーケットであまり伸びないのか、それを縦軸に取って、横軸には、その市場の中での自社のシェア、相対的な市場の占有率というのを取って、4つに分けて考えてみるという考え方です。
 そうすると、問題児だとか、花形商品だとか、金のなる木だとか、負け犬というような言葉で表されるような4つのタイプに分かれるんですけれども、要は上半分、この2つですね。これから市場が伸びて行くところには、どんどんどんどんお金も人もぶっ込んで伸ばしていこうよと。特に自社のシェアが小さいところは、今はもうけは出ないけれども、そこを頑張ってお金をしっかり投資をして、問題児だったものを花形商品のスターにシフトアップしていこうというような、そういうようなやり方ですね。
 一方、市場、花形商品だったんだけれども、どんどん市場が成熟していって、あまり伸びがないなと思ったら、それはもう投資、さらなる設備投資だったりだとか、優秀な人材をここに投入する必要はなくて、守りでいいでしょうということでこっちになってきてる。それがまた枯れていったりだとか、そういうような、事業そのもののライフサイクルがこういうふうに回っていくよというような、そういう考え方です。
 シール屋さんの中でも印刷をほとんどやらずに、抜きの加工に特化しているところとかも中にはありますよね。あれなんかはまさに、昔は印刷をやっていたんだけれども、「印刷じゃなくて抜きだけやっているほうがもうかるんじゃね?」というところに気がついて、抜きの専用の機械を買って、それをここに持って来たような、そういう例だと思ってください。同じようなことは、そんなに大企業じゃなくてもあると思うんですよ。
 例えば、最近だったらマスキングテープとか、一時期はやったじゃないですか。マスキングテープはこれから伸びるぞと言ったら、そこのマスキングテープ、もう既に業界ではどこかとどこかがもうシェアを持っていて、自社のシェアはないけれども、自社のシェアはまだまだ小さいけれども、マスキングテープの市場が伸びるぞと思ったら、それはまさにここなわけですね。シェアは小さいけれども、市場はこれから伸びるだろうと。こういうようなところを見つけたら、半分博打で機械を買っちゃうんですね。機械を買っちゃう。機械を買って、どんどんどんどんここに設備投資して、自社のシェアを広げていく。そうすると、だんだんだんだんこっちになっていくと。そういうような考え方なんですけれどもね。
 この考え方を今現在の自社のお客さまの分析に当てはめてみて考えたらどうなるかというのが、次のPPM、プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントを、プロダクトじゃなくて顧客のセグメント分析に応用してみましたという例です。これは手前味噌ですが、うちの会社で今年からやっている内容なんですけれども。なので、ここで書かれているこの言葉も勝手につくった造語ですね。お客さまから新規の引き合いがたくさんくるお客さまのグループと、そんなに新規の案件がないグループと、それを縦軸に取って。横軸は、そのお客さまの中のシェアを横軸に取ると。さっき、複数社購買していますかなんていうお話もしましたけれども。
 そうやって考えると、うちの会社の例なんですけれども、売り上げをたくさん持ってきてくださるところ、コア・アカウントというふうに呼んでいるんですが、コア、中心となるアカウントですね。そのコア・アカウントの中で、活発に動いているからアクティブ、アクティブ・コア・アカウント。マチュアというのは成熟したという意味なんですけれども、注文はいっぱい来ているんだけれども、新規はなくてリピートばっかりだというところはマチュア・コア・アカウントと呼んでいる。
 まだお客さんと取り引きが始まったばかりだとか、これから開拓したいなというようなところで売り上げが少ないようなところは、ストラテジック、戦略的に攻め込んでいこうということで、ストラテジック・アカウントという呼び方をして。で、それ以外のところ、顧客内のシェアが低かったりだとか、新規の案件が少ない、または、そもそもパイが小さいようなところは、管理していないアカウント、注文が来たら返すけれども、こちらから積極的に営業が動く必要はないよねということで、アンマネージドという言い方をしています。
 こうやって分けてみると、うちの営業の人間はここに行くべきなんですよね。新規の案件が来そうなところ。でも営業マンって、ちゃんと叱らないと、ここばっかり行きません? 注文をたくさんくれているいいお客さん、でも新規の案件がほとんどない。だから、実は行かなくてもいいところ、ここばかり行きたがるんですね。それはちゃんとお客さんをこういうふうに分類して、お前ら、ここばっかりに時間を使っていないで、こっちに行け、こっちに行けというのをお尻を叩いて今やっているところです。
 なので、あの営業さんが皆さんの会社に来ない。これ、協賛会の方々がいらっしゃるので、例を出すとあれなんですけれども。ある会社の営業さん、とても仲はいいのに、うちに全然営業に来ないと。こういう場ではよく会って、お酒も楽しく飲んで、ゴルフでもよく会うんだけれども、全然営業に来ないと。何でだろうと考えたら、簡単なことなんですよ。山王に行っても注文をくれないから、山王に来ないんです。あるいは、山王に行かなくても注文くれるから、わざわざ行かないんですよ。
 これはいい悪いの問題じゃなくて、そういうものなんです。だって、僕らが営業をかけようとするときも同じ考え方でやったほうがいいから、これは絶対そうなんですね。なので、僕らはもう、さっきの繰り返しになりますけれども、アンマネージドのお客さまはわれわれの営業が行っても注文をくれないからもう行かない。バッサリと切り捨てるんじゃない、行かないと、営業活動はしないと。受け身の営業だけで十分でしょうと。
 マチュア・コアは行かなくても注文をくれるから、やっぱりこれも行かないと。たまに表敬訪問で、季節のあいさつぐらいは当然行きますけれどもね。で、空いた時間を、ストラテジックとアクティブ・コアのために使うと。そうすることで営業の効率をどんどんどんどん上げていって、また新規の案件を取っていければいいかなというふうに考えて、今やっております。
 すみません。3分オーバーしてしまいましたけれども、一応こんな考えで、今日のポイントは、ブランディング、安売り競争をやめましょうよと。自社の強みをちゃんとみんな明確に持って、それで各社がブランディングをしていきましょうというのと。あとは、売り、営業さん、営業マンを抱えていらっしゃる会社さんは、その営業マンの動かし方を工夫するといいですよというのと。あとはSWOT分析で、自社の強みというのをもう一度見つめ直す。ブランディングのために自社の強みを見つめ直すには、SWOT分析が有効ですよというお話をさせていただきました。
 以上になります。ご清聴どうもありがとうございました。
 
 
前に