TOP
 正札シール組合2019年度行事>2019通常総会講演会
 
 第2弾
 田中祐 全日本シール印刷協同組合連合会会長 講演B
   
前に      次に
 
まず利益の方程式というのも、方程式なんて言っていますけども、簡単な話です。利益というのはどこから出てくるかというと、売上から費用を引いたものですね。ごくごく大ざっぱに言ってしまうと。これは単純な話。では、その売上はどうやって出来上がるかというと、単価掛ける数量ですね。これも2つの見方があって、お客さま単位で見たときには「客単価掛ける客数」。もしくは、製品単位で見たときには「商品単価掛ける販売数量」。この掛け算で出来上がります。一方、費用は、固定費と変動費に大きく分けられるでしょうというところですね。
 利益を上げる、利益を増やしていくためにはどうすればいいかといったら、まず売上は当然増やせばいい。費用は当然下げればいい。それはそうですね。じゃあ、売上を上げるためにはどうすればいいかといったら、これは掛け算ですから、単価も数量も上げていけばいいですね。そして、費用を下げるためにはどうすればいいかといったら、これは足し算ですから、その両方を下げていけばいい。固定費を下げて、変動費を下げる。こういう簡単な図式で表されるわけです。
 ただ、口で言うほど簡単じゃないよねというのは、皆さん重々承知のところだと思いますが、ただ、1つずつこれをひもといていって、それぞれどうすれば上がるのかとか、どうすれば下がるのかというところを、自社の事例を交えながらこれからお話をしていきたいと思います。
 まず客単価を上げるにはどうすればいいかと。幾つかの方策をご紹介したいと思います。まず1つ目は、ターゲット顧客に営業リソースをシフトする。営業リソースというのは、営業マンの使う時間であったりだとか、さまざまな営業活動費というふうに考えていただければいいと思います。仕事をいっぱいくれそうなところに、いっぱい時間もお金も使いましょうということです。簡単に言えば。
 ABC分析だとかというやり方もあります。お客さまをABCでカテゴライズして、Aグループさんには毎週訪問する、Bグループさんには2週に一遍、Cグループさんには1カ月に一遍だとか。
 あとは、これも1月にちょっとお話をしましたけれども、新規の案件が眠っていそうなところだけに訪問する。いくら注文をくれていても、新規の案件がないところは黙っていても注文をくれるんだから、営業活動しなくてもいいだろう。行ってもくれないところには、営業活動しても注文をくれないところにはもう行かなくてもいいとか、そういうような判断基準で営業のリソースをシフトする。そういうことで、ターゲットとしたお客さまからの売上を拡大するチャンスが出てくるということです。
 2点目は、クロスセルとアップセル。これは聞いたことありますかね。マーケティングとかではすごく基本的な概念で出てくるんですけれども、よく言われるのがマクドナルドの売り方ですね。クロスセルというのは、ハンバーガーと一緒にポテトもいかがですかという、抱き合わせ商法というか、一緒に売るというのがクロスセルですね。アップセルというのは、ハンバーガーを注文しようとしている人にビックマックはいかがですかと言って、より高いものを買わせるという考え方ですね。
 これらを組み合わせて、より客単価を上げていく、1回の購入金額を上げるというようなやり方です。これ、シールラベルで何か応用できますかね。クロスセル、アップセル。例えば気の利いた営業パーソンだったら、毎月ご注文いただいているものがちょっと途絶えそうになったら、別のものを注文いただいたときに、そういえばそろそろこちらもご入り用じゃないですかというようなクロスセルをしたりだとか、あとは当社の例で言いますと、当社はシール印刷機とスクリーン印刷機とインクジェットの印刷機、この大きく3つの印刷方式でやっているんですけれども、シールの注文をいただいても、これは屋外で使うんでしたらぜひスクリーンでやりましょうよというような話をしたりだとか、そういったことが考えられますね。
 3点目は、複数社購買時にはライバル分析。これはお客さまが当社だけではなくて、ほかのラベル会社さんも並行して使っているようなケース。そんなときに、どういうふうに使い分けをされているのかというのをきちんと分析をしようと。皆さん、把握されていますか。どうもうちだけじゃなくて、あそことあそこからも買っているらしいぞと。そこぐらいは分かりますよね。間違って見積りが来たりとか、注文書が来たりとかして、これはうちじゃないですよなんて言いながら、なんてありますけれども。
 じゃあ、そのシェアはどういうふうになっているか。うちが3割で、ライバルA社が4割で、残りの3割がまたライバルB社であるだとか、お客さんはどういうふうな使い分けをしているのか。本当のすごく小さくて簡単で大量なものだけうちに来ていて、より難しくて印刷面積も広くて、高い値段のものは実はB社に流れているんじゃないかだったりだとか。そういうようなお客さまも必ず使い分けは何らかの理由があるはずなので、どういうような使い分けをしているかというのをきちんと知っておく必要がある。
 それは、お客さまに単刀直入に聞くしかないんですよ。うちにはどういうお仕事をいただいていて、よそさんにはどんなお仕事をご注文されているんですかと、単刀直入に聞くしかないですよね。それか、あまりこれを言うとコンプライアンス的に問題になるかもしれないけれども、今はどうですかね。よく発注先ごとに書類トレーとかがあって、そこに伝票があって、そこをルートで取りに行くようなケースとか、そういう商売はあまりないですか。そういうのがあると、自社のトレーより前に、よそのライバルのところのトレーをこうやって見てみてね。これはなしにしてください。
 あとは、自社の強みという話も前回させてもらったんですけども、自社の強みってなかなか自分では分からないんですよね。そんなときにお客さまに、本当に長年お取引いただいていますけれども、ありがとうございますと。ところで、何でうちを使ってくださっているんですか。聞いてみるしかないですね。そうすると、いろいろな答えが返ってくると思いますけれどもね。しょうがないから頼んでいるだとか、もちろん価格面だったり、品質面で素晴らしいからとか、対応がいいからだとか、営業の誰々さんがすごく気に入っているから、個人的に君のことをすごく気に入っているから、君がうちの窓口をやってくれている限りは注文し続けるみたいな、結構本当にあるんですよ。そういう話も。担当が替わった途端に売上ががくんと下がったりだとか、逆にがくんと上がったりだとか、結局は人と人とのビジネスですからね。そういうような形で、何で使っていただいているのか、どういうふうに使い分けをしていらっしゃるのかというのを聞いてみるというのも1つ面白いと思います。
 4点目が、これはお勧めですね。ただ単にシールラベルを印刷してお売りするだけではなくて、その上流工程や下流工程へサービスの内容を拡張する。これも自社の例で恐縮なんですけど、当社の場合は電車や飛行機のラベル類、比較的大きなものをメインでやっていますので、ただ作って納めるだけではなくて、最近は実際にそれを飛行機や電車に貼るところまでお手伝いをさせていただいております。なので、そっちのほうのビジネスが最近結構伸びてきて、当社の社員でやっているのではなくて、専門の職人さんに外注をしているので、利幅はそれほどはないんですけれども、ただ売上高としてはそれが大きなビジネスにはなりつつあります。
 一方で、それを例えば、作った後に貼るというのを下流とするじゃないですか。作る前の上流はどうするかという話になると、これは皆さんのところでもできるかもしれないんですけど、よく工業系のラベルをやっていらっしゃる印刷会社さんで、お客さんの図面が発行されるのが遅いからなかなか印刷できないだとか、いざ発行されてもすごく短納期で急がなきゃいけないなんていうときがあったりしませんかね。
 今、うちの会社で考えているのは、図面作成代行サービス。もともと図面というか、スペックのところからご相談いただくケースが多いんですよ。こういうところに貼りたいんだけれども、どんな素材がいいかなだとか、どんな加工方法がいいだろうかということを相談されるケースが多々あるんですけれども、今まではそこでコンサルティングというか、情報提供というか、こういうやり方がありますよという形で説明だけしていたんですが、今後は図面まで書いちゃったらどうかなと今考えています。
 そうすることで、自社のスペックに逆にはめられちゃいますよね。絶対よそではできない。その図面の中に、ぺけぺけぺけは山王テクノアート指定とするとか勝手に書いちゃうとかね。いろいろとそんなことも考えています。
 ただ、これらをやるには、どうしても直接取引が大前提になってくると思います。間接取引で間に1社でも2社でも入っていると、なかなかこういうようなプロアクティブなサービスというか、ものになる前のサービスというのはできにくいんじゃないかなというふうに思います。
 ですので、この直接取引というのも1つ大きなキーワードだと思うんですけども、これも『ラベル新聞』さんの『日本のラベル市場』という2019年版が出ましたけれども、あの本を見ていたら、今ラベル会社さん、日本に専業兼業合わせて2900社ほどあるらしいんです。その会社数というよりは、直接取引と間接取引の比率が大体6:4ぐらいだそうです。6:4で間接のほうが多いのかな。なので、直接取引をやっているところはまだまだ少ない、相対的に見ると。どうしても間に商社さんであったりだとか、ほかの印刷会社さん。だから、一般印刷の会社さんであったりだとか、あるいは同業者、ラベル印刷会社さんの間での横持ちみたいなものが結構あるということなんですけれども、本当に売上を伸ばしたかったら、やっぱり直接取引を狙っていくべきだと思いますね。
 
 
 
前に         次に