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 正札シール組合2019年度行事>2019通常総会講演会
 
 第2弾
 田中祐 全日本シール印刷協同組合連合会会長 講演
 東京都正札シール印刷協同組合は5月17日(金)午後3時30分から、東京・西新宿の京王プラザホテルで、当協組理事長で全日本シール印刷協同組合連合会の田中祐会長を講師に「2019通常総会講演会」を開催した。年頭の「シール印刷とブランド戦略 “ゆでガエルにならないために…”」と題した新年講演会が好評だったため、通常総会に併せて第2弾を企画したもの。「シール印刷会社勝ち残るための処方箋」がテーマとなった講演要旨(全5P)を紹介する(文責・事務局)     
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 皆さん、こんにちは。ただ今紹介にあずかりました全日本シール印刷協同組合連合会会長、そして、先ほど無事終了しました東京都正札シール印刷協同組合の総会で第12代の理事長を拝命いたしました、山王テクノアーツ株式会社の田中でございます。どうぞよろしくお願いいたします。今年の1月の賀詞交歓会の際に講演会というのをやらせていただきまして、そのときは上野精養軒で大体同じぐらいですかね。50名ほどの方にお集まりいただきまして、お話をさせていただいたんですけれども、そのとき皆さんが非常に面白かったと社交辞令を言ってくれたおかげで、本日第2回をやらせていただくという運びになりました。
 最初に、この講演会の趣旨というか、概要をお話しさせていただきたいと思います。ご案内のチラシにもありましたとおり、諸先輩方が懐かしく語る、「刷れば刷るだけ儲かった」時代はもう二度と訪れません。需要と供給のバランスが崩れ、また技術力での差別化が困難となった今、以前と同じやり方では、大手や地方の有力企業、あるいは新規参入者に仕事を奪われるだけです。本日は、混迷の時代に勝ち残るための処方箋を、自社の事例を交えて説明します。
 「刷れば刷るだけ儲かった」時代。今日はそんな経験のある方、いらっしゃらないようですね。年齢的に。僕らのお父さんたちの世代は、ちょうどバブルの真っ盛りのころ、1980年代後半から90年代にかけては、本当にシールというのがどこでも必要で、本当に刷れば刷るだけ儲かったと。お札を刷っているようなものだというようなことも言われた時代もあったそうです。ただ、今は全くそんな感覚はないですよね。そんな時代はとっくのとうに終わっていて、僕らが今過ごしている、今年から令和という新しい時代になりましたけども、全く違う時代に今入っているんだよというところをまず皆さんに認識をしていただきたいと思います。
 そして次に、「需要と供給のバランス」。これはよく経済の用語でも言われますけれども、シール印刷の業界で言ったらどういうことかというと、シールを欲しがる人とシールを作る側の人の数のバランスが崩れつつあるということですね。皆さんもイメージしていただければすぐ分かると思うんですけども、昔と同じような大量の注文というのは減っているんじゃないかと思うんですよ。1ロットがどんどん小さくなって、多品種少量生産の時代になって、お客さまもそんなにたくさん、大量生産の時代ではないので、そんなにたくさん要らないと。なおかつ、経済そのものが今かなりスローダウンしていますので、それほどシールそのものの需要は増えないというか、ひょっとしたら減っているかもしれません。にもかかわらず、我々シール印刷会社は昔と同じ調子で刷っていたら、当然その需要と供給のバランスが崩れますよね。
 そうすることで何が起こるかというと、価格競争が起こるわけなんですよ。需要を供給が上回った瞬間に、1円でも1銭でも安いところに仕事が流れるというような経済原理が働いて、どんどん価格が下がっていくような、悪いスパイラルに陥ってしまっているんじゃないかというふうに思います。
 そして3点目、「技術力での差別化が困難」というところです。これは例えば、シール・ラベルコンテストの応募作品とかを見ていましても、非常に技術力が拮抗しているなというのが近年の印象です。要は、昔みたいに安かろう悪かろうのシールってほとんどなくなってきて、皆さんそこそこきれいに作れるような状況になっていると。機械もそういうような操作の簡単な機械というのがどんどん出ていますし、原紙も品質は当然上がっているんだと思います。ですので、技術力での差別化というのがだんだん困難になっているんじゃないかなというふうにとらえています。
 「以前と同じやり方」ですね。以前と同じやり方。作り方も売り方も以前と同じやり方では、もうこの先太刀打ちできないですよということです。特に今、作り方に関しては、技術力での差別化が困難というお話をしましたが、これは今日のお話のテーマになるんですけども、売り方について今までと同じやり方、例えば一般印刷の会社さんからのお仕事をもらうだとか、自社で全く営業活動をしないで仕事が来るのを待っているだけだったりしたら、絶対仕事というのは減っていくと思います。なので、そういうような以前と同じやり方は通用しないですよということです。
 5点目が、「大手や地方の有力企業」さんです。東京にいるとなかなか分からないんですけれども、大手さんはいいですね。「大」が付く大手さんだとかいろいろな大手さんがありますけれども、以前はその大手さんの価格攻勢に組合で何とか太刀打ちできないかということで、組合で文書を作ろうなんていう話もあったりしたんですけれども、市場経済の中で、自由競争の中で、それはちょっと違うんじゃないかということで、結局はその話は立ち消えになったんですけれども。
 一方で地方の有力企業さん、これは去年のちょうど総会のときにお話をさせていただいたんですが、あいさつのときにエピソードとして入れさせてもらったんですけれども、地方の有力なシール印刷会社さんが東京に営業所を出しましたと。東京で営業活動をしてみたんだけれども、思うように受注が取れなくて東京から撤退しましたというような話は、僕の知る限り聞いたことがないんですよ。皆さん、地方から東京にやって来て、東京でしっかりお仕事をつかまえることができているんですね。
 これはどういうことかというと、今、我々は東京にいると、景気悪いよねとか、仕事減っちゃったよねと言っていますけれども、地方経済のほうがよっぽど疲弊をしている。そんな中で彼らは死に物狂いで、東京に仕事が集まっているだろうということで、東京にどんどん進出をしてきている。東京で受注して、地方で人件費の安いところで印刷をして、その日のうちに宅配便でまた全国に発送する。そういうようなビジネスモデルが出来上がりつつありますので、地方の有力企業さんというのは非常に、今、僕は東京の立場でお話をしますけれども、非常に我々にとって脅威になっているということですね。
 いつの間にか、よく分からないけれども、仕事が減っているとかってないですか。前はずっとリピートで注文を受けていたのに、いつの間にか徐々に徐々に減っていって、気が付いたら、そういえば昔あんなお客さんがあったんだけども、最近全然来ないよねみたいなケースってあると思うんですけども、それは大きく2つの理由があって、1つはそのお客さま自身もやっぱり景気が悪くて仕事が減っているというケースと、もう1つはよそに取られているということですね。よそに取られていることにどれだけみんな敏感になっているかというのは、すごく大事なところだと思います。
 「新規参入者」。今からシールの機械を買って、シールの市場に来る人ってどのくらいいると皆さん思います? 具体的な数字は僕も正直つかまえてはいないんですけれども、ただ1つ言えることは、平圧や間欠のコンベンショナルな印刷機にしても、デジタルの印刷機にしても、組合員はそんなに買っていないのに、機械メーカーさんは潤っているっぽいんですよね。潤っているまでは言っては語弊があるかもしれないけども、組合員以外に機械はいっぱい売れているそうですよ。デジタルにしても、そうでないコンベンショナルにしても。
 一般印刷の会社さんだとか、フォームやグラビアの会社さんが、自社のもともとのビジネスがなかなか思うようにいかなくて、シールはまだましらしいぞということで、シールラベル業界に非常に興味を持っていらっしゃる。特にナローウェブの扱いに慣れているような会社さんなんていうのは、すぐにでも印刷機を買いたがる。デジタルも同じですね。デジタルだとそれほど技術力に差別化が難しいというか、本当はいろいろとあるとは思うんですけれども、そういったところで、デジタルの印刷機を買って、今の我々の仕事を侵食しているというようなケースというのも実は結構あったりします。
 そういった中で、我々が今後どういうふうにやって生き延びていければいいのかということで、あらためて我々を取り巻く環境。去年「ゆでガエル」という表現を僕はさせてもらいましたけども、それから1年たって何が変わったか。そして、「利益の方程式」というふうに今回書かせてもらっているんですが、利益を確保して会社を存続させていくために、どういうことを考えていけばいいのか。利益はどこから生まれてきて、そしてそれを増やすにはどうすればいいのかというお話をさせていただいて、最後に本日のまとめというような流れで今日の構成を考えております。
 
 
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