田中祐 全日本シール印刷協同組合連合会会長 講演C |
次に、売上を上げるためのもう1つの要素である数のほうです。客数を増やすにはどうすればいいか。これも幾つか書いてみたんですが、まず一番確実なのは、その購買の窓口の方に自社の「ファン」になっていただいて、紹介をしていただく。長年のお取引の中で信頼関係をしっかり築いて、こういったものならば山王さんに頼もうというような関係が出来上がると、よそに紹介をしてくださる。 最近の例ですと、当社でJR系列の電車の製造会社さん、電車の車両を作っているメーカーさんがあるんですけども、そことずっとお取引をさせていただいていたんですが、その購買の窓口の方が当社のことを非常に気に入ってくださって、本当にありがたいお話なんですけれども、JRのグループの別の会社さんですね。駅の整備をしている会社さんに当社のことをご紹介いただいて、ホームドアのお仕事を今度始めることになりました。 なので、これもやっぱり直接取引というのが大前提になると思うんですが、ある大手のグループ会社のうちの1つとお取引をしていると、その中でいろいろと横のご紹介をいただいたりだとか、そういったケースも出てくることがありますね。 ただ、ファンになっていただくのも大事なんですけども、それだけではなくて、その分野だったらどこどこというふうに、一番にイメージされるような会社になる必要がある。何々だったらどこどこという形ですね。そういうようなニッチ分野でのトップ企業になるというのは非常に大事なことです。 そうは言っても、うちの会社はそんなに特徴もないし、そんなのないよと言う方は大勢いらっしゃると思うんですけども、探せばいろいろあるんですよ。しかも、1つの条件で探そうとするからいけない。1つの条件で探そうとするからいけないんです。例えば、Aというジャンルの中のBという条件だったらどこどこというような、掛け算で考えればいいんですね。分かります? 1つの座標軸だけでやろうとすると、非常にライバルも多いです。でも、その1つの座標軸、縦軸だけではなくて横軸も組み合わせていくと、割と自社の強みというのが見つかるケースがありますね。 例えば、うちの会社は電車や飛行機で使われるような屋外でのラベルが得意ですと言いますよね。それは1つの軸ですよね。でも、そんなの皆さんご存じのとおり、シールじゃなくてスクリーンで印刷すればみんなそうなんですよ。でも、施工までお手伝いできますと言ったら、それが横軸になりますよね。そうしたら、山王さんでも、どこどこさんでも、どこどこさんでも作れるんだけれども、貼りまでお願いしたいから山王さんに頼むよという話になるわけですよ。分かりますかね。なので、1つの軸だけでとらえようとするんじゃなくて、2つ、場合によっては3つ、4つ軸を増やしてもいいと思うんですけども、そういう形で自社のポジショニングを考えていけばいいと思います。 あとはWeb広告だとか展示会出展。これは潜在的なお客さま、見込み客に対して自社の認知度を上げるという行為ですね。こういったものもあります。 これは、「USPを確立せよ!」とここでキーワードを入れさせてもらったんですけども、USPというのは、これもマーケティングの用語で、ユニーク・セリング・プロポジションですね。よそに負けない自社の特徴ですね。そういったものをきちんと確立しましょうと。何々ならばどこどこというものをちゃんとつくり上げようじゃないかということですね。それも1軸だけではなくて2軸、3軸で考えたら、必ずどんな会社さんでも、その会社独自のユニークな特徴というものが見つかると思いますので、ぜひそういう形で自社をとらえ直してみてください。 商品単価を上げるには? ということで、ここは価格戦略の話をして います。しっかりと原価計算し、ポリシーを持って売価を決める。売価というのは売値ですね。皆さんの会社でどれだけ厳密に原価計算をやっていらっしゃるかちょっと分からないんですけども、きちんと原価計算を行って、それに対して何割の粗利を乗せるということを、今まで実はうち、全然やっていなかったんですよ。その名も「みつもりくん」という名前のエクセルのシートがあって、そこにぽんぽんぽんと数字を入れると大体の概算の見積りが出るという、簡易的な見積り方式でやっていたんですけども、最近あるコンサルタントの方にご指導いただいて、原価計算をしっかりとあらためてやるようにしたら、実は今までのやり方だと、黒字の商品ももちろんあるんですけども、赤字の商品も結構あったと。これじゃあいかんよねということで、きちんと原価計算をして、確実に利益が取れるような価格設定をして、それでご提案をするように最近はしています。 その結果、当社は10月決算で、この4月で半期が終わったところなんですけども、前年比で売上が実は10%ダウンしています。ただ、利益は倍以上出ています。きちんと、価格もポリシーが必要ということですね。あと書いてありますけど、相見積、価格競争には参加しないと。 そして、赤字商品は再見積りを依頼する。これも今さらだって言えないよって皆さん思うじゃないですか。でも、結構やってみると通りますよ。前回のご注文から5年経過しているんですが、原材料費も高騰していますし、実はすみません、5年前には当社はすごくざるなやり方をやっていまして、今、厳密に計算し直したらこの価格になるんですけれどもと言って、再見積りで出したら、8割方は通りますね。残りの2割は、いいよ、それじゃあよそに頼むよというのが当然中にはあります。でも、いいんですよ。よそに行ってくれたほうが。儲かる仕事だけやりたいんだもの。売上が下がったって利益が上がっているんだから、儲かる仕事だけやればいいんですよ。 あとは割増料金ですね。これも賛否両論、当然あると思いますけども、最近当社はやらせてもらっています。見積りのときに、標準リードタイムは何日ですと。それよりも短納期をご所望の場合には50%の割増料金をちょうだいします。1回目の見積りよりも、じゃあ1.5倍払ってもいいから、すぐ作ってくれというケースはありますね。 要は、価格にもちゃんと戦略を持とうじゃないかということです。お客さまの言いなりの価格でやったりだとか、今までの慣習、慣例的な価格設定ではなくて、きちんと価格にも戦略を持ちましょうということですね。 もう1つ、売上を上げるための要素として、販売数量を増やすには? 実はこれはちょっと難しいんですけれども。というのは、数量を別に増やさなくてもいいかなとは思っているんだけれども、でも単価掛ける数量が売上なので、数量を少しでも増やしたいと。そうしたら、まず最初に考えるのは最少ロットと単位ロットを決めることですね。2000枚とか5000枚という注文はもう受け付けませんと。最低でも1万枚からです。そこから先は5000枚刻みです。そういうようなことをやることで、注文数量を増やすと。 あとは「ロットまとめ」。例えば、2カ月に一遍2000枚ずつ注文が来ているお客さまに対して、年間1万2000枚一遍にご注文いただけませんかと。その代わり、ちょっとお安くしておきますよと。 でもこれ、後で出てきますけども、2000枚の仕事を年間6回やるために費やす段取り時間を考えたら、3割ぐらい引いても黒字になるという試算がうちでは出ました。ちょっと後半でお話ししますけど、うちの会社の場合、情けないことに段取り時間が全作業時間の75%あったんですよ。シールだったら版替えだとか位置合わせであったりだとか、そういうことで実際の量産の時間は全体の4分の1しかなかった。4分の3は段取り会の時間だったというので、じゃあそれを削減するにはどうすればいいかというところから出てきたのがこの話ですね。 あとは標準化する。似たような図柄のものがあったら、これは一緒じゃないですか、合わせましょうよ、同じのを作っちゃいましょうよというふうに言ったりだとか、あるいは市販のシールに手を出すかですね。ただ、それはリスクもありますね。市販というのは、お客さまからの注文に合わせて作るものではなくて、汎用的に使えるようなシールを作るということなんですけども、やっぱりそれはどこも考えるので、価格競争に巻き込まれる可能性はありますね。 これもキーワードは「主導権を握れ!」ということで、数量に関してもお客さまの言いなりではなくて、こちら側が主導権を握るような、そんな交渉をしたらいいんじゃないかなということです。 |
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