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 正札シール組合>>2019年度行事>2019通常総会講演会
 
 第2弾
 田中祐 全日本シール印刷協同組合連合会会長 講演D
   
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  今度は下げるほうの話ですね。費用は下げればいいよということで、まず固定費を下げるには? これはうちの会社の本当の決算の数字から持ってきたんですけども、あえて赤裸々にご紹介をしております。10年前、平成20年10月期、2008年、リーマンショックのころですね。リーマンショックのその年。僕はまだ社長になりたてでした。右も左も分からなくて、従業員の皆さんから何か買いたいんだけどもとかというような申請があったりすると、どうぞどうぞみたいな感じで、本当に無計画にお金を使っていた。その当時は売上高3億9000万に対して、人件費以外の代表的な経理科目を持ってきているんですけども、コントロールしようと思えばコントロールできる科目ということで持ってきているんですが、ここにあるような経費が1800万円。営業利益は損失、マイナス2360万。大赤字でした。
 これじゃいけないよねというので、ご存じの方もいらっしゃると思うんですけど、うちの会社はリーマンの後、ここから売上がさらにあとうん千万ぐらい下がって、八王子に都落ちをして、本当に細々とやっていたんですけども、その当時、何とか八王子で税金も滞納して、社会保険も滞納して、毎月月末には給料を払った後、銀行口座に残るのは数十万円みたいな月もずっとあったんですけれども、そんなときに今に見ていろよということで、従業員のみんなにお願いして、とにかくケチケチモードでお金をセーブしようと。利益をここまで出せるんだというのを見せて、銀行さんを見返してやろうということでやっていた当時が大体5年、6年ぐらい前。平成25年ですね。
 この当時は売上は5億3000万まで回復をして、ただこういった経費類は割と押さえ込んでいて、全体の3.8%。結果として営業利益は6300万。なので、12%ぐらいの利益率を出すことができました。
 ここで見ていただきたいのは、うんと削っている科目もある反面、広告宣伝費みたいにぐんと増やしているところもあるということです。なので、お金の使い方は、よく固定費を下げるためには人を切るという話が最初に出てくるんですけども、絶対駄目ですよ。これからの時代。お金よりも人です。これからますます人が採れなくなる時代がやって来ると思います。そんなときに従業員に愛されないような会社経営の仕方だと、絶対立ちゆかなくなりますので、かといって甘やかしても駄目なんですけれども、従業員に不安を持たせちゃいけない。うちの会社はしっかり従業員を守ってくれているんだということを分かってもらわなきゃいけないので、人員整理というのは本当の最後の最後の最後の最後の手段です。その前に削れるところというのはいくらでもあるということを今日は言いたくて、わざわざこの数字を持ってきたんですけどね。
 なので、ケチケチ期でも教育は結構お金を掛けていました。逆にこの当時は全然教育に興味がなかったんだけれども、ケチケチといいながら教育には年間180万ほど使って、あとは旅費交通費。これは出張は行けと。行って仕事を取ってこようじゃないかということで、250万ほどここはアップしています。ただ、接待交際費は削りました。福利厚生費で、法定福利費以外の会社の飲み会であったりだとか、さまざまな従業員のためのものも、これは頭を下げてごめん、勘弁してくれということで、ちょっとだけ我慢してくれということで下げたりだとか、そういうことをやっています。
 直近では、今度はイケイケ期ということで、売上は7億5000万までいきまして、利益も一応2000万ほど出ているんですけれども、この真ん中のときに比べると利益率は全然低いですね。ただ、その分、逆に必要なところにはいっぱいお金を使って、将来への投資であったりだとか、従業員の皆さんのためにやれることはやったりだとか。事務用品費とかもすごいでしょう。この当時はこれだけしか使っていない。これはよっぽどケチケチしていたんですけども、パソコンを買ったのはここですかね。こんな感じになっています。
 別に決算書をご披露して、自慢したいわけでも何でもなくて、削ろうと思えばまだまだ削れる要素はどこにでもあるはずですし、逆に削っちゃいけないところだとか、苦しいときでも投資をしなきゃいけない部分というのもあるんじゃないかなということですね。ちょうどこれで隠れています。皆さんのところね。先入観を捨てて、削れるところは削って、削っちゃいけないところは削らないでやっていっていただければいいかなと思います。
 最後に、もう1つの費用で下げるところ、変動費を下げるにはどうすればいいか。まず考えられるのが、材料費を下げる。だからといって、材料メーカーさんに値引き交渉をするということではないです。まずはお客さまの要求するスペックを満たす、より安価な材料を探して、それへの切り替えを提案する。このような用途であればこちらの紙、こちらのフィルム系材料で十分機能を果たせると思うんですけれども、こちらにすれば幾らお安くできますよと。実際のコストダウン価格よりも下げ幅を小さく言っておけば、自社のほうにもお金が残りますよね。
 そういう形で材料費を下げたりだとか、あとはヤレや不良を監視して、投入材料を減らす。ここはぎざぎざというのが出ちゃっているので、皆さんのところにありますよね、これね。データを取るだけで減りますから。レコーディング・ダイエットと一緒ですよ。レコーディング・ダイエットって一時期はやりましたよね。毎日体重計に乗って、ちゃんとその数字を記録して、食べたものも書いておくだけで、自分の無意識のところにフィードバックがちゃんと返ってきて、どか食いしなくなったりだとかそうなるというので、レコーディング・ダイエットというのが一時期はやったんですけども、これはあらゆる生産管理での手法で言えると思うんですけども、データを取りだすだけでまず最初ぐーんと減ります。間違いなく減ります。ヤレのメーター数を管理しようねと言って、データを取りだした瞬間にびょんと下がったりだとかするというのがありますね。これはやったことがある方は体感されているかと思います。
 あと、ヤレや不良を監視し、投入材料を減らすというのは、実は結果的に機械の稼働時間を短縮することができるので、次の人件費も下がることになるんですよ。これは変動費の中での人件費という考え方で、その品物を作るためにどれだけの時間を費やしたかというので、単位時間当たりのコストを掛けて、それを人件費と呼んでいるんですけれども、とにかく短時間で作れば作るほど原価は当然下がりますよね。これは当たり前の話ですよね。なので、ここで出てくるんですけど、段取り時間を監視して、稼働率を上げるですね。
 あとは機械の回転数を上げて、投入時間を短縮する。これもよく言われるんですけど、そんなに効果はないです。回転数を上げたからって。何十万通しとかというんだったら話は別だけれども、よっぽど今のショートランと言われる多品種少量生産の場合は、回転数を上げることよりも段取り時間を削減することを考えたほうがいいですね。どうやったら段取りが減らせるのか。
 あと、人件費が高い人に機械を回させちゃ駄目ですね。当たり前じゃないですか。社長さんがいまだに機械を回している会社さんも中にはありますけれども、できればオペレーターさんを雇って、社長さんは営業に出たほうがいいと思います。それは各会社さんの方針であったりだとか、ご事情もあると思いますが、月給30万のオペレーターさんと月給100万の社長さん、社長さんが作るほうが3倍コストが掛かっているわけですよ。だからといって、3倍の値段で売れないですよね。なので、原価で考えたら、社長さんが機械を回すほどばからしいことはないんですよね。かといって、雇うほどの仕事がないとか、あるとは思うんですけれども、ただ、そういうようなコスト感覚で考えてみるのも1つ大事なんじゃないかなと思います。

 それでは、本日のまとめです。今後、経営環境はますます厳しくなっていきます。これは冒頭にお話をしたとおりです。しかし、外部環境のせいにして手を打たないままでいますと、いつのまにか「ゆでガエル」になってしまいますよと。後半お話ししたように、利益を上げるにはさまざまな手法があります。経営者の覚悟で会社の命運が決まります。
 これ、実は全部かぶっちゃっています? その後出てくるのに。それじゃあ、ちゃんと読みますよ。「ゆでガエル」になってしまいますよと。利益を上げるには、さまざまな手法があります。経営者の覚悟で会社の命運が決まります。「常識」を疑い、聖域なき業務改革を!!
 ただ、ここまで言っても、「ああ、いい話を聞いた」で終わるんですよ、みんな。あえて憎まれ口をたたきますけれども、やらないでしょう、みんな。お勉強しても。だから変わらないんですよ。今日僕がご紹介したことは、うまくいっているケースもあれば、失敗しているケースもありますし、もちろん皆さんの会社にはそのままでは適用することができないことも多々あったと思います。ただ、何でもいいので、何か次に一歩踏み出して実行に移さない限りは、何も変わりません。
 ぜひ、そういうことをこれからうちの組合では全部開けっぴろげに、もちろん会社のご事情でお話しできないことがあればそれはいいんですけども、うちはこういうことをやってみたよだとか、うちはこういうことをやってみたんだけれども駄目だったとか良かったよとかというようなことを、もっともっと情報共有をして、お互いにそれをヒントにして、あそこでこれをやっているんだったらうちではこうやってみようだとか、そういうようなヒントを交換できるような、そんな組合活動をこれからやっていきたいと思いますので、ぜひ。正直、みんなが出てこなくてもしょうがないです。出てきた人たちが出てきてよかったなと思えるような、そんな活動をこれからやっていきたいと思いますので、皆さん、ご協力をよろしくお願いいたします。
 私の話は以上になります。最後までご清聴どうもありがとうございました。
 
 
 
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